☆この小説は「愛と官能の美学」のShyrockさんより投稿して頂いたものです。著作権はShyrockさんが持っておられます。

shyrock作 駐輪場
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加藤氏は60歳。退職後、駅前の駐輪場の仕事に就いた。
 仕事は料金徴収と掃除だ。
 最近は料金徴収はほとんどない。
 定期利用券を見れば用が足りるからだ。
 高校生、OLの利用者が多い。
 ここに自転車を置いて電車通勤、通学に変わるのだ。

 あの娘が来た。
 毎日の利用だから自然と顔を覚える。
 この時間だからたぶん帰宅だ。
 いまどきの若い娘にしてはその娘は礼儀正しい。
 加藤氏に頭を下げる。
 きちんとした服装が高校生らしい。
 どこかの高校のセーラー姿のその娘の顔を見るのが加藤氏の楽しみ。
 重そうなカバンを持ちながら自分の自転車のところに行く。
 どこに住んでいるのかも、どこの学校なのかもよく知らないが、それで良いのだ。
 毎日、丁寧な挨拶を交わしてくれるだけで、何か心がなごむ。

 自転車を押しながら少女がまた入り口を通る。
 挨拶しながら自転車に乗る。

(あっ、落ちた)

 黒っぽいビニールのカバンが荷台から滑った。
 気づかないのかそのまま自転車が走っていく。
「あっ、落ちたよ~」と言う前に少女はずいぶん先に走って行ってしまった。

(しようがないなあ)

 加藤氏は警備室を出ると、荷物を拾いに行く。
 ぱっと袋の口が広がっている。

(タオル?)

 白いタオルが入っている。
 湿っぽい。
 きれいに折り畳んだタオルを少し広げると中身が見える。
 紺色の水着。
 まだ濡れている。

 加藤氏はハッと周りを伺う。
 誰も見ていない。
 袋を持ってあわてて警備室に戻った。
 外から見えない窓口の下でもう一度袋を広げた。
 懐かしいようなプールの消毒の匂い。
 水着の裏の肌色の布地がちらっと見える。
 また周りを伺う。
 誰も来ない。
 見ていない。
 少年のように緊張しながら加藤氏は手を中に差し入れる。
 かなり濡れている。
 それは少女が若鮎のように今日泳いだことを示している。
 少女の濡れ髪が頭に浮かぶ。
 でもなぜか袋の中から水着を出すことは、はばかられた。
 中で探った。
 意外と薄い生地。

 加藤氏には高校の水着のことは分からないが、その2つのゴムのカップがどこに当たるかはすぐに分かった。
 優しい少女の小さな胸を隠すため。
 指ですっと触れた。
 きっとこの辺が、小さな乳首だと想像しながら。
 間違いなくそこにゴムは当たっただろう。

 薄手の紺の水着はプールの水を吸って重い。
 少女の身体に触れていた布地をたどっていくと、その部分にすぐにたどり着く。
 何があるわけではない。
 透けないように肌色の布がパンツのように貼り付いている。
 そこはたぶん少女の大切な部分に触れていたのだ。
 まだ生娘の少女の身体を包むように人目から隠していたのだ。
 そこを垣間みただけで加藤氏には十分だった。
 その上、よく見ると細い細い縮れた黒い糸のようなものがついている。
 下の毛のようなもの。
 短い縮れ毛をじっと見た。
 肌色の布地は全く汚れていない。
 塩素で洗濯したばかりのようにただ濡れている。

 急にそれが何か大切なことのように加藤氏には思えてきた。
 何もしない方がいい。
 まだ少女の優しい挨拶を受ける権利は失いたくない。
 たとえばれなくても良心の呵責は感じたくない。
 加藤氏は袋を閉じると落とし物の箱にそれを運んだ。





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