第15夜 茶道部の男子
茶道部の男子

 高校2年生で茶道部部長の佳澄は学級委員を務める才色兼備の優等生だが、小学校時代ある男子の性的いじめの中心となっていた苦い記憶を持つ。その男子正人は茶道部に入部すると、何と佳澄に告白。当然断ると、佳澄を拘束監禁して強姦を試みる。ノロマでうまく思いが果たせないが人並み外れた正人の巨根に恐れをなした佳澄は、やむなくかつての女王様に戻って彼に前戯を施すよう命令し、処女喪失の痛みを軽減するため気分を出そうと奮闘するのだが、やがて…… (約2万7千字)

4.心の通わぬ乳房揉み(4041字)

「そっか。これが濡れないと駄目なのか……」

 アイツはパンツを手で撫でていたかと思うと、顔を限界まで近付けてスリスリと擦り付けて来た。そのおぞましさに、私はやめて!と喉から出掛かった言葉を必死で我慢しなければならなかった。我慢しなきゃ。アイツは狙い通り、このパンツを濡らさなきゃならないと思い込んでくれたのかも知れないのだ。そして私が濡らしてしまう事は、絶対に、ない。

「じゃあ、このパンツが濡れたら僕とえっちしてくれるんですね?」
「う、うん、もちろん」

 もう嘘も方便だ。少なくとも時間稼ぎは出来るだろう。その間に何としてもアイツをだまして思いとどまらせるのだ。小学校の時は、いつもだまして来たではないか。それがこの窮地にも通用するという保証は全くなかったけれど、私はその一縷の望みに掛けるよりなかった。

「どうしたら、いいんだろう? ねえ、どうしたら濡れてくれるのかな?」

 バカかコイツは!手足の自由を奪って強姦しようとしている女性に、そんな事を聞く男がどこにいる?もちろん答える義務などない私は黙っていたのだけれど。

「そっか。このままに放っとけば、佳純さんオシッコ洩らしてくれるよね」
「……駄目だよ、そんなの!」
 
 濡れると言っても、オシッコじゃないよ! もしかしたらコイツはわざと愚鈍なフリをして私をからかっているのだろうか? ちょうど、小学校の時と立場を逆にして……

「でも、僕もしょっちゅうオシッコ洩らしちゃったよね、佳純さんのおかげで」
 
 違う!あれは私だけじゃない。クラスのみんなで……が、今それを言い出しても無意味だ。私はやはり押本正人が小学校時代のイジメをしっかり覚えている事を改めて確信し、どんどん背筋を恐怖が這い上がって来るのを感じていた。小便を洩らすなんて序の口だ。あんな事や、あんな事や……嫌だ、絶対に思い出したくない!

「ね、ねえ、押本君、もう遅いでしょ。私がオシッコ洩らしちゃうなんての待ってるヒマないよ、早く帰らなきゃ!」
「大丈夫だよ。だって、佳純さん、今日は塾で遅くなる日でしょ」

 な、何でそんな事知ってるんだ?

「だから、後3時間は大丈夫だね。それより早くオシッコ洩らしてよ」

 うう、そんな事言われて意識してしまうと、さっきお抹茶を飲んじゃったし、下半身がパンツ一丁で冷えてて尿意が感じられていた。すぐにでも出せそうだし、3時間と言わず1時間も放っとかれたらマジでヤバそうだ。私は羞恥と屈辱を克服して次の策に出た。

「あ、あのさ……たぶん、おっぱい揉むとかしたら、いいんじゃないの?」

 何てまるで他人事みたいに提案すると、アイツはすぐに乗って来た。

「そっか。 そうだよね、女の子とえっちする時は、まずおっぱいをモミモミすればいいんだ……」

 コイツ、本当にバカなのだろうか? それともわざと私をからかって、とぼけたフリを……いや、そんな頭の回るような奴じゃない。そして、アイツは人の字に仰向けに寝かされている私の体をまたいで馬乗りになると、とうとう上のシャツを脱がせてしまったのだった。私が着けていたのは下とお揃いの花柄のブラジャーだ。

「お、おっぱい、おっきいですね、佳純さん」

 アイツが興奮して鼻息を荒げ、治まっていたどもりと共にそんな事を言う。あんな事を言ってしまった事を私はすぐに後悔したが、もう手遅れだ。ブラくらい背中ですぐに外せるのに、すっかり頭に血が上って顔を真っ赤にしたアイツは、ハサミを手に取るとブラカップを繋いだ部分をチョキンと切ってむしり取って来た。プルンと2つの膨らみが露になり、私は耐えられなくなって目を閉じた。そしてすぐにアイツは手を伸ばして、高校生としてはたぶん人並み以上に豊かな私のバストを両手でムンズと掴んで来た。

「痛いっ!」

 バ、バカ!何て乱暴な扱いをするんだ、コイツは……私は思わずそう苦痛を口にし、もっと優しくして、と言いそうになってからハッと気付き慌てて口をつぐんだ。

ーーうう……痛い、痛い、痛いよお!

 私がわざわざ痛いと言って教えてやったにも関わらず、アイツはぎゅうぎゅうと力一杯乳房をこねるように揉んで来る。その痛さに私は心中で悲鳴を上げ、泣いてしまいそうだったけど、あえて黙ってじっと身を固めていた。そう、こんなやり方なら絶対に感じる事なんてあり得ない。デリケートな女性の体の扱い方なんか何もわかっていないらしいアイツに乳房を力いっぱい蹂躙される痛みに耐えながら、私は、これでいいんだ、と思った。痛みならじっと耐えて時が過ぎるのを待てばいいだけだ。そして私は慎重に、アイツを利する事のないように口を開いた。

「ね、ねえ、押本君。私今日は突然過ぎて、君を受け入れる気持ちの整理が付かないのよ。だから、いくらおっぱいを揉まれてもその気になりそうにないの」

 するとアイツはしばらく手を休めて私の言葉に耳を傾けている。しめた! さすがに愚鈍なコイツでも、私がいくら愛撫しても反応しない事がわかれば、もしかすると諦めてくれるかも知れない。私はその可能性に賭ける事にして、乳房を無理やり揉まれる苦痛を免除されている間に頭の中で策をめぐらせた。

「ねえ、押本君がおっぱいを揉み始めてどのくらいの時間がたった?」
「10分くらい、かな?」

 10分でもそのおぞましさと苦痛を味わうには十分な時間だ。

「も、もう10分揉んでも、私が感じなかったら、今日はもうやめようよ」
「又今度させてくれるのかい?」
「う、うん……」
「嘘だ!」

 ちょっと甘かったようだ。

「それに10分くらいじゃ駄目だ。だって、僕はバカでノロマだから、何でも人より倍以上掛かるんだよ。佳純さんだって、よく知ってるでしょ」
「じ、じゃあ……」
「もう30分モミモミさせて」
「そんな!」

 だが、もうアイツは無言で乳房揉みを再開して来た。

ーーうっ!

 しかも、ああ何て事だ! アイツの揉み方はかなり緩やかになっていた。ほとんど痛くない程度に。ひょっとして、アイツも私が痛がってだけである事に気付き、もっと力を加減しなければならないと学習してしまったのだろうか? もちろんそれでも下手くそな事には変わりがないし、こんな生理的嫌悪を覚えるやつの手に感じてしまうなんてあり得ない。しかし万が一に備えて、私は気持ちを引き締めて長い乳房愛撫に立ち向かわねばならなくなっていた。

「優しくしてあげたら、少しは感じてくれるかな?」
「た、たぶん、やっぱり駄目だよ今日は。ま、ま、又今度にしない、お、押本君?」

 もちろんちっとも感じてなんかいないんだけど、いつの間にか私の絞り出す声は慄えが止まらなくなっていた。これは快感を覚えてしまったからではない。おぞましさが極まってしまったのだ……

「まだまだ。後20分はモミモミしないと……」

 も、もう十分でしょ! 感じもしない女の子のおっぱいをバカみたいに長々と揉み続けて何が面白いのよ! しかしアイツはそれ切り押し黙って一心不乱に乳房揉みに精を出し、私も無駄な口を挟むのはやめてこの恥辱的な行為をただじっと堪えるしかなかったのである。それにしても何と時間のたつのが遅いのだろう。ここまでの10分でも頭が変になりそうなくらい、ほとんど永遠に続く淫らな拷問みたいに感じられたのに、さらに倍の20分、この虫唾の走るかつてのイジメられっ子男子に乳房を揉み回されねばならないのか……

 アイツの乳房揉みは、確かに当初の荒々しく苦痛を与えるだけのものから妙にゆっくりと壊れ物でも扱うようなソフトなタッチに変わっていたけれど、間違いなく童貞で女性のカラダを愛撫するのも初めてだろうと思われるアイツの、ぎこちないやり方に私の体が反応を示すわけはなかった。第一好意のかけらすら持っていない、反対に近寄られるのも嫌な男の愛撫に感じてしまう事はあり得ない。女の子の体は心と密接に繋がっていて、心を閉ざした相手には体も拒絶反応しか表さないのだ。その証拠が、私の2つの膨らみの頂点で眠ったまましょぼくれて乳房に埋もれている乳首である。1人えっちをする時、私はまず軽くソッと乳首に触れる。するとすぐに心地良い感触でそのはしたないツボミが目覚め始め、そこを摘んだ指でクリクリと弄ると素晴らしい快感が迸って、私はえっちモードに入っちゃうのである。又時にはおっぱいの膨らみをゆっくりと揉む事から始める日もあるのだが、そんな時は優しい母性的な快感と共に頂点の乳首がグングン大きくなって来る。要するに私のおっぱいは十分感度が発達していてとても敏感なのだ。

 なのに、もう30分近くアイツに弄られても私の乳房が全然良くならず、先端の乳首もムクリともしていないと言うのは、私の体が押本正人を頑固に拒絶している、という何よりの証拠だろう。うん、私の心も体も健全だ。いい加減諦めてよ! いくらそんな一生権懸命おっぱいを揉んだ所で、私の体がお前に反応する事なんかあり得ない、時間の無駄よ。

 思い詰めたように無言でせっせと私の乳房を揉み続けるアイツを見ていると、手足の自由を奪われている自分の窮状をよそに、何だか哀れなイジメられっ子を見下しているような不思議な気持ちになって来た。押本君、君は何をやっても駄目でノロマで不細工で、頭が良くて運動神経が発達しその上美人の私とは、同じ空気を吸う事さえおこがましい程の存在なのよ。私とえっちしたいだなんて、ちゃんちゃらおかしいわ、身の程をわきまえなさい。ほら、いくら頑張ったって、私の体はちっとも良くならないじゃない、気色悪いだけだわ……

 無言の乳房揉みに耐えかねて、私の中からムクムクと沸き起こって来た押本正人に対するそんな感情にハッと気付いた私は、次の瞬間愕然とした。これはもう2度と思い出すまいと、記憶の中に封じ込めたはずの、あのおぞましい感情ではないか。駄目だ! この記憶と感情は闇に葬ってしまわねば……あの押本正人に対する集団イジメの頂点に立っていた私は、精神に異常を来たしていたんだ。あれは本当の私なんかでは断じてない!


続く→茶道部の男子 5.昔に戻って愛撫を要求

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