膚の下(下) 神林長平

410VitN7V+L





 こんにちは、二次元世界の調教師です。レビューを書きました。

主人公である慧慈らアートルーパーの、中華風名称に奇異なものを感じていたが、実は同等のモデルが西洋にも存在し、東洋のモデルとして、老荘思想に影響を受ける、と言う説明で納得。「万物は本来同じものであり、別の生物に生まれ変わっても、永遠にその生は続く」と言う慧慈の到達した境地は、正に東洋ならではのものであろう。

 自らを仇敵として付け狙う人物をもその生を願い、全てを分子レベルまで破壊して、新たな創造を目論む勢力に対抗して、全ての生物を転生させての復興を目指す思想。初め奇異に思われたのだけれど、老荘思想をバックボーンの哲学的なもので、人間が創造したアートルーパーがこの思想に到達した事に、言いようのない感銘を受けた。



 アートルーパーと機械人と言う、本来人間が作った人工知能に過ぎないものが、人間性を獲得して人間とせめぎ合うストーリーは、実に読み応えがあり、且つ極めて示唆に富み考えさせられる内容であった。確かに「神林SFの到達点」と言う看板に偽りなしと思う。


 個人的に日本SF界最強作家と思っている、神林長平入魂の傑作だと思いました。