こんにちは、二次元世界の調教師です。感想を書きました。

花神(下)司馬遼太郎

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この長編を読み終えて、今までよく知らなかった、大村益次郎の異才ぶりに感嘆した。日本でただ一人の西洋軍事専門家として、あまりにも時代を先取りし過ぎて、日本古来の戦闘集団である「武士」には全く理解されず、異端児扱いされている様子がよく描かれている。

 戦争は個人の戦闘力によるものでなく、兵器の性能次第である、と言う技術への信奉が、彼の真骨頂であり、潔いまでに他者を交わろうとしない、彼の孤高ぶりがあって、初めて倒幕が成されたのである。その存在は、花咲じいさんならぬ「軍神」と呼ぶべきであり、幕末の偉人達の中でも、一際異彩を放っている。そんな「軍神」大村益次郎の最期に、不倫相手のイネを登場させたのは、司馬遼太郎一流の小説作法で、まるで機械のような彼も、一人の人間であったと言う印象を受けた。

 動乱の幕末が生んだ奇跡、大村益次郎の波瀾万丈な生涯を、存分に堪能出来る傑作長篇であった。私がこれまでに読んだ司馬作品のベスト。