こんにちは、二次元世界の調教師です。塩野七生のライフワーク、ローマ人の物語に感想を書きました。

ローマ人の物語 (26) 賢帝の世紀(下) 塩野七生

51FSBPEA08L._SX346_BO1,204,203,200_

帝国の辺境にまで及ぶ、視察旅行に命を賭け、ユダヤ問題で後世に禍根を残した行動派ハドリアヌスの後半生と、後継者である人格者のアントニヌス・ピウスと言う、対照的な2人の皇帝を描いた巻。「塩野好み」はハドリアヌスの方だと思うが、私は前皇帝の意に反するような、新しい事は何一つしなかった、と評される、アントニヌス・ピウスの方に興味を持った。

 もしも時代が異なっていれば、凡庸な皇帝だと責められかねない彼の治世が、最も平和な時代だったのである。別の言い方をすれば「英雄を必要としない」時代だったわけであり、彼の保守的な姿勢が生きたのだと思う。

 平和の続く現代日本は、果たして「英雄を必要としない」時代なのだろうか。この巻を読みながら、そんな思いが心に浮かんだ。優れた歴史小説であるがゆえである。