☆この小説は「愛と官能の美学」のShyrockさんより投稿して頂いたものです。著作権はShyrockさんが持っておられます。
shyrock作 綾 長安人中伝
shyrock作 綾 長安人中伝
第13話
「女好きと言うのは、特定の女だけではなくて、女全般に興味を示す男の事を言う」
「ふむ、なるほど。左様ですか」
「呂布は違う。奴は豪傑である上に美男子でもあることから、多くの女にたいそう評判が良いが、自身は一本気な男のようだ。惚れた女以外に興味を示さない」
「つまりなんですな。ここに捕らえた綾以外には手を出さないということですなあ?」
「そういうことだ。宮中の美女からも言い寄られたが、まったく動じなかったと聞く。それほどにこの綾に執心しているというわけだ」
「相当ですなあ」
「うん、おそらく女と言えば、この綾以外眼中にないと思われる」
「なるほど、読めましたぞ。だからこそ、この綾をひっ捕らえ、呂布を誘(おび)き寄せる算段ですな?」
「ふふふ、まあ、簡単に言えばそういうことだ」
「だがそうやすやすと来ますかな?」
「来る。奴は必ずやって来る」
地公将軍こと張宝は、不敵な笑みを浮かべた。
「楽しみですなあ~」
「全くだ。わっはっはっはっは~~~!」
「はっはっはっ~~~。呂布の慌てた顔が早く見たいものですなあ~」
「必ず見れるさ。わっはっはっはっは~~~!」
一方、村襲撃の賊を殲滅して凱旋の途に着いていた呂布は愛馬“赤兎馬(せきとば)”に跨り、配下の者達と語らいながらゆっくりと進軍していた。
自分達が戦闘の間、まさか綾達の身に不幸が襲っていたとは呂布を肇め誰一人想像もしていなかった。
しかし・・・。
(プツン)
「ん・・・!?」
呂布の冠っていた兜の顎紐がどういう訳か突然プツリと切れてしまったのだ。
周りにいた武将が呂布に声を掛けた。
「将軍、どうなさったのですか?」
「うん、兜の紐が切れたのだ。昨夜、紐を取り替えたばかりだと言うのに」
「おそらく今日の激しい戦で傷んでいたのでしょう」
「激しい戦?馬鹿を言え。俺は1人の敵とも剣を合わしてないぞ。今日の敵は野盗のようなうじ虫どもだったし、お前達が簡単に片付けてしまったではないか」
「確かに将軍は指揮を執っておられただけだったですなあ」
「だろう?なのに紐が切れるとはおかしいではないか」
「たまたまそう言うこともあるのではないでしょうか。まあ、あんまり気になされないように」
「うん」
第14話
綾は窓がなく光の届かない暗い牢獄で、両手を後手に縛られうずくまっていた。
連れ去られる途中、張宝達の会話を小耳に挟み、彼らが自分を誘拐した目的を凡そ察知することができた。
宿敵呂布をおびき寄せるために自分を捕えたのだと。
呂布の性格から考えて、恋人の綾を助けるために血眼になって探し、必ずこちらに向かって来ると・・・。
(きっと何か罠を仕掛けてるんだわ・・・大変だわ・・・どうしよう・・・)
(ガタン!)
綾が呂布への想いに耽っている時、突然、牢獄の扉が開き看守らしき男が遠慮なくズカズカと入って来た。
「おい、夕飯だ」
看守は粗末な皿に盛られた食事を綾の前に差し出した。
皿はよく見ると数箇所欠けている。
「・・・・・・」
綾は口を真一文字に結わえ、目を吊り上げて看守を睨みつけ、その後顔を背けてしまった。
「なんだ、その態度は。飯いらないのか?」
「・・・・・・」
「両手を縛られてて不自由だから、俺が食わせてやろうと思ってたのに、そうかい、そうかい、いいだろう。じゃあ、そのまま飢え死にしちまいな」
「・・・・・・」
綾は看守に視線を合わそうとしなかった。
床を見つめたまま、無言の抵抗を示した。
「じゃあここに置いといてやるから、食いたくなったら這いつくばって食いな。わっはっはっはっは~」
「・・・・・・」
侮辱の言葉に綾は初めて看守の方を見やり、ぐっと睨み返した。
まもなく高笑いを残し、看守は牢獄を出て行った。
(バタン)
空腹ではある。
だけど食べる気にはなれない。
それよりも水が欲しい。
喉が渇いた。
それと便所はどこにあるのだろうか。
綾は緊張のあまり微かな尿意を催し始めていた。
暗い牢獄内をよく見ると、隅の方に便所らしき蓋がある。
続く→綾 長安人中伝 第15~16話
戻る→綾 長安人中伝 第11~12話
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「女好きと言うのは、特定の女だけではなくて、女全般に興味を示す男の事を言う」
「ふむ、なるほど。左様ですか」
「呂布は違う。奴は豪傑である上に美男子でもあることから、多くの女にたいそう評判が良いが、自身は一本気な男のようだ。惚れた女以外に興味を示さない」
「つまりなんですな。ここに捕らえた綾以外には手を出さないということですなあ?」
「そういうことだ。宮中の美女からも言い寄られたが、まったく動じなかったと聞く。それほどにこの綾に執心しているというわけだ」
「相当ですなあ」
「うん、おそらく女と言えば、この綾以外眼中にないと思われる」
「なるほど、読めましたぞ。だからこそ、この綾をひっ捕らえ、呂布を誘(おび)き寄せる算段ですな?」
「ふふふ、まあ、簡単に言えばそういうことだ」
「だがそうやすやすと来ますかな?」
「来る。奴は必ずやって来る」
地公将軍こと張宝は、不敵な笑みを浮かべた。
「楽しみですなあ~」
「全くだ。わっはっはっはっは~~~!」
「はっはっはっ~~~。呂布の慌てた顔が早く見たいものですなあ~」
「必ず見れるさ。わっはっはっはっは~~~!」
一方、村襲撃の賊を殲滅して凱旋の途に着いていた呂布は愛馬“赤兎馬(せきとば)”に跨り、配下の者達と語らいながらゆっくりと進軍していた。
自分達が戦闘の間、まさか綾達の身に不幸が襲っていたとは呂布を肇め誰一人想像もしていなかった。
しかし・・・。
(プツン)
「ん・・・!?」
呂布の冠っていた兜の顎紐がどういう訳か突然プツリと切れてしまったのだ。
周りにいた武将が呂布に声を掛けた。
「将軍、どうなさったのですか?」
「うん、兜の紐が切れたのだ。昨夜、紐を取り替えたばかりだと言うのに」
「おそらく今日の激しい戦で傷んでいたのでしょう」
「激しい戦?馬鹿を言え。俺は1人の敵とも剣を合わしてないぞ。今日の敵は野盗のようなうじ虫どもだったし、お前達が簡単に片付けてしまったではないか」
「確かに将軍は指揮を執っておられただけだったですなあ」
「だろう?なのに紐が切れるとはおかしいではないか」
「たまたまそう言うこともあるのではないでしょうか。まあ、あんまり気になされないように」
「うん」
第14話
綾は窓がなく光の届かない暗い牢獄で、両手を後手に縛られうずくまっていた。
連れ去られる途中、張宝達の会話を小耳に挟み、彼らが自分を誘拐した目的を凡そ察知することができた。
宿敵呂布をおびき寄せるために自分を捕えたのだと。
呂布の性格から考えて、恋人の綾を助けるために血眼になって探し、必ずこちらに向かって来ると・・・。
(きっと何か罠を仕掛けてるんだわ・・・大変だわ・・・どうしよう・・・)
(ガタン!)
綾が呂布への想いに耽っている時、突然、牢獄の扉が開き看守らしき男が遠慮なくズカズカと入って来た。
「おい、夕飯だ」
看守は粗末な皿に盛られた食事を綾の前に差し出した。
皿はよく見ると数箇所欠けている。
「・・・・・・」
綾は口を真一文字に結わえ、目を吊り上げて看守を睨みつけ、その後顔を背けてしまった。
「なんだ、その態度は。飯いらないのか?」
「・・・・・・」
「両手を縛られてて不自由だから、俺が食わせてやろうと思ってたのに、そうかい、そうかい、いいだろう。じゃあ、そのまま飢え死にしちまいな」
「・・・・・・」
綾は看守に視線を合わそうとしなかった。
床を見つめたまま、無言の抵抗を示した。
「じゃあここに置いといてやるから、食いたくなったら這いつくばって食いな。わっはっはっはっは~」
「・・・・・・」
侮辱の言葉に綾は初めて看守の方を見やり、ぐっと睨み返した。
まもなく高笑いを残し、看守は牢獄を出て行った。
(バタン)
空腹ではある。
だけど食べる気にはなれない。
それよりも水が欲しい。
喉が渇いた。
それと便所はどこにあるのだろうか。
綾は緊張のあまり微かな尿意を催し始めていた。
暗い牢獄内をよく見ると、隅の方に便所らしき蓋がある。
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