２２．望み薄の出世払いでアダルトグッズショッピング（２７９３字）


　俺がSM好きである事を告げてから始まった、美里との同棲生活。週末だけにも関わらず、カラダの相性がバッチリな事も幸いし、美里に「ご主人様」と呼ばせる、主従関係を確立。今や彼女は俺の命令に必ず従う、理想的な関係である。平日は貞操帯を嵌めて禁欲を課し、週末は俺に抱かれて激しく乱れ、何度もアクメして満足し、次の土日を夢見て別れるのだ。全く、愛する女性をSM調教する、俺の夢は怖いくらい順調そのもの。


　が、秋が深まる頃、避けては通れぬ問題が顕在化して来た。それは、俺には経済力がほとんどないと、言う事実だ。美里にプレゼント１つ、買ってやる事も出来ない。働いてると言っても、三食付きで居候してるのだ。せいぜい子供の小遣い程度貰ってるに過ぎない。正志さんに相談しても、おばさん共々、首をひねるばかり。


「お嬢ちゃんに頼るしかないな。実家は金持ちなんだろ？」
「何でも言う事聞いてくれるんでしょ？」


　結局そうなる事はわかっていた。貞操帯を始め、俺は今、この夫婦のお古を使って、美里を調教しているのだ。新たな調教具を望むならば、彼女の経済力に頼る他ない。ご主人様としては情けないが、奴隷の美里に頭を下げて頼む事になった。


「と言うわけだ。悪いが、買い物に付き合ってくれ。金はないけどな」
「命令してくたら、いいのに」
「じゃ金を貸してくれ」
「金を出せ、でいいよ」


　と、言うわけで、再び訪れた「ルーズソックス」。女子学生が、下着を買い取ってもらい、それを店で販売する、いわゆる「ブルセラショップ」である。前回訪れたのは、露出調教デートの時。正志さんの知り合いである、三枝店長が、下着にプレミアを付ける染みを作るため、秘密兵器として、「電マ」を紹介してくれた、「アダルトショップ」でもある。


　三枝さんに相談しようと思ったが、土曜の昼下がりとあって、店は繁盛していた。下着の買い取り客らしい、制服姿の女子を連れて、三枝さんは。「撮影室」の中に消えた。待ってる間、俺は美里と話していた。ごく普通の大人しそうな女子だけど、プレミアを付けるため、電マで染みを作ってるのだろうか、と。


「お前、凄かったもんな。5色のパンツを、あっと言う間にビショビショにしちまった、ありゃ神業だな」
「あんなの思い出したくないよ。恥ずかしい」
「恥ずかしい品物を買いに来たんだぜ。待ってる間に、商品を見てみよう」


　店内は雑然としており、使用済みの下着を売る「ブルセラコーナー」の隣は、アダルトグッズが、所狭しと置いてある。本物を模したバイブレータなど、見るからに卑猥な品々に隠れて、俺の目当てであるＳＭ系のグッズが並べられていた。中の１つを手に取った俺は。美里に見せる。


「どうだ。本格的で立派な首輪だろう」




　それは、スチール製の高級な首輪で、チェーンのリードも付いていた。もちろん、犬を繋ぐわけではない。パッケージに入っており、人間の女性が装着してるサンプル写真が付いてたから、ＳＭプレイ用とわかるだろう。美里は無言で顔を赤らめていた。


「でも、結構いい値段だな」


　チャチなオモチャではない。ズッシリ重量感もあって、リードも含め本格的。無一文な俺には、手が届くものじゃないだろう。その時、「撮影室」のドアが開き、まず大人しそうな制服少女が現れる。心なしか赤面し、足元がフラ付いてるように見えた。美里が小声で囁く。


「この子も頑張ったみたいね」
「染み作りをか？」
「きっと、電マが活躍したんだよ」


　経験者だけに、美里の観察力は、馬鹿にならない。続いて、店の青いエプロンを羽織った、三枝店長が現れた。


「お疲れ様です」
「いやあ、最近の子はススンでますなあ。今の子中学生なんですが、3枚もはいては、染みを作りまして。電マがえらく気にいったみたいで、何でもなかったみたいに『オジサン、又ね』って。ノーパンで帰って行きましたわ」


　やっぱり、東京は、田舎と違い、性にオープンな女生徒が多いのだろう。美里はさらに上手だけど、曲がりなりにも、短大生だ。


「美里さんの記録はまだ残ってます。５枚も商品を作ってもらい、飛ぶように売れましたわ。人気の高いお嬢様学校ですからね」


　下着売りの女子は、午後のピークを過ぎたらしく、店内は商品を物色する男が、点在してるだけだった、俺は三枝店長に、まず目を付けていた首輪とリードのセットを見せた。


「いやあ、それはお目が高い！　嵌める際に、六角レンチで締め付けますので、絶対に自力では外せないスグレモノですわ」
「でも、この値段では、ちょっと手が出ません」


　すると、驚くべき事に、ここで美里がが口を出す。


「私、この首輪が欲しいです！　あ、あの、プレゼントしてください、ご主人…サマ」


　よっぽど俺が物欲しそうに見えたのか。実の所お金を出すのは美里なのである。


「よし、プレゼントしてやろう。これで美里は俺のものだ」


　後ろ盾を得た俺は、１万円近いその首輪のパッケージを破り、美里の首に嵌めると、六角レンチで締め上げる。更にガッチリとリードを取り付けると、付き出した美里の唇を奪った。


「……ご主人サマ。嬉しいわ」　
「ご馳走様でした」


　人前でラブラブな所を見せてしまった、少し愛れてる三枝店長に、俺は本題を切り出した。


「実は、本格的な露出プレイをやってみたいのですが」


「本格的と言いますと？」


「パンチラとかじゃなくて、スッパダカで」


　これは、男だけの温泉旅行で思い付いたのだ。全裸でチンポを構え、「ね、ら、い。う、ち」と山本リンダを歌っていた、正志さんの雄姿が念頭にあった。もちろん俺がハダカになるつもりはない。あくまで美里に綺麗なハダカを露出させて、羞恥で酷く興奮するであろう、彼女の痴態を楽しむ算段だ。



　ハダカになるのは美里だから、彼女を連れて店内を回る。三枝さんは、そうゆうプレイも経験があるらしく、女性を全裸で辱めるのに、さまざまな器具・薬物・拘束具などを紹介してくれた。もちろん嫌がる彼女に無理矢理なんてマネはせず、説明を聞いた美里が納得して初めて、購入したのだが、途中から彼女の決意は凄まじく、俺の方が怖気づいてしまいそうだった。


ーー美里。お前、本物の変態マゾなのか？


「では、これから、上級者用プレイを紹介しましょう」
「お、おい、美里。これは遠慮するか？」
「浩平がいいなら、私何でもやるわ」


　悲愴な覚悟の美里は、「上級者プレイ」に挑もうと、食い入るように三枝さんの説明を聞いている。そして、更に高額なSMグッズの購入もすませてしまった。


「悪いな美里。出世払いにしといてくれ」
「浩平、出世するの？」
「今の所、そんな予定は一切ないな」


　こうして、本格露出プレイ用グッズを大量に買い込んだ俺達は、正気とは思えないプレイを実行しようと、次の週末を迎えたのである。




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プチＳＭ千夜一夜ものがたり第５期