☆この小説は「愛と官能の美学」のShyrockさんより投稿して頂いたものです。著作権はShyrockさん及び縄吉さんが持っておられます。

縄吉&shyrock作 牢獄の美姉弟
牢獄の美姉弟



<登場人物>

末永志乃   十八歳、沢辺藩指南役末永謙信の長女、利発、秀麗
末永菊乃助   十六歳、沢辺藩指南役末永謙信の長男、美少年

末永謙信   四十五歳、沢辺藩指南役、正義感が強く不正を嫌う
沢辺義信   四十一歳、沢辺藩七万石の藩主、早逝
黒崎大善   五十歳、沢辺藩家老、腹黒い、藩主を亡き者とし藩乗っ取りを企てる
黒崎進十朗  ニ十五歳、沢辺藩家臣、黒崎大善の息子、狡猾、志乃に想いを寄せる
宮本鉄乃進  ニ十二歳 沢辺藩家臣、志乃と幼なじみ。志乃から慕われる
梅安     六十歳、医者
松平利定   三十八歳 沢辺藩奉行、旗本、家老に次ぐ役職、人望が厚い

笹川勝蔵   五十五歳、笹川一家親分
辰蔵     三十歳、笹川一家若頭
お松     三十五歳、女郎
お米     二十八歳、女郎
お美和    十五歳、女郎、足抜けに失敗

婆さん     六十八歳 農家 志乃を助ける
お里     三十五歳、農家、長女
吉助     三十一歳 農家、お里の弟




第16話 決行の夜

 紅い夕陽に照らされ引き締まった菊乃助の裸身が悩ましく光っている。磔柱のまわりに松明が焚かれた。西の山に陽が沈みあたりが薄暗くなった頃、観衆も少しずつ帰路につき始めた。
 いつの間にか椿屋の前の黒山の人だかりは消えあたりは沈み返ってきた。
 磔柱の周りに十数人の見張りの男たちがいるだけになった。七、八人残っていた野次馬達もいつしか姿を消していた。
 もうあたりは真っ暗になった。
 椿屋の正面が見渡せる数軒離れた宿屋の屋根の上に黒装束を身に着けた志乃が身を伏せていた。志乃一人で救い出すには見張りが手薄になるのを待つしかなかった。しかし、今だ十数人のみはりが磔柱のまわりをうろうろしているのだ。
 志乃は待った。あたりはかなり冷えてきた。全裸の菊乃助にはかなりきびしいものであろう。志乃はすぐにでも出て行って救い出してやりたいと思うのだがお里に言われた「手薄になるのを待つのです」という言葉がそれを止めていた。二人とも捕まってはいられないのだ。二人には江戸に密書を届ける大事な使命があるのだ。
 どれほど時間が経ったであろうか。椿屋の中から一人の男が飛び出してきて「おい、みんな、夜は長い、夜食の用意ができたぜ、一旦中に入って腹ごしらえだ」と見張りの男達に呼びかけた。
「そうか、じゃあ、慎太と安、お前達二人は残れ、後の者は腹ごしらえだ」と辰蔵は男達を引き連れ椿屋の中へと姿消していった。
 なんと見張りは二人だけになったのだ。志乃は急なことにあわてた。今やらなければそれだけが慎重さを欠かせた。これが相手の策略とは志乃は気づいていなかった。
 志乃は屋根越しに椿屋の脇の路地まで近寄った。
 しかし見張りが手薄どころか数十人の男達が身構えていたのだ。
 そうとも知らず、志乃が路地から飛び出し見張りの男一人を一撃で気絶させた。

「あっ、出た」ともう一人の見張りの男が声をあげた。志乃はその男に向かって走り一刀のもとに切り捨てた。
「菊乃助、助けに来たわよ」と志乃が磔柱に駆け寄った時「残念だが、そうはいかないぜ。ヒッヒッヒ」と数十人の男達が飛び出してきて志乃を取り囲んだ。
「あっ、計られたか」と志乃は身構えた。
「おいおい、お嬢さん、戦う気かい、怪我するぜ、あきらめて刀を捨てな」と辰蔵が言った。
「卑怯者、寄るな」
「ヒッヒッヒッヒ、なかなか気が強いお嬢さんだな、おい、かまわねぇ、ひっ捕えろ」と辰蔵が叫んだ。
 
 数人の男が志乃に飛び掛った。しかし、志乃の刀が舞った。その男達はギャーと悲鳴をあげ地面を転げまわった。

「この女、甘くみていりゃいい気になって、野郎ども手加減しないで捕まえろ、殺すんじゃないぞ、生け捕りだ」と辰蔵が声を荒立てた。

 しかし、剣道指南役の娘だけに手こずっている。
 その時、「おい、女、これを見ろ、弟の大事なものがなくなってもいいのか」という辰蔵の声にハッとして志乃は振り向いた。
 辰蔵の刀が菊乃助の男根の根元に押し付けられていたのだ。

「ヒッヒッヒ、小僧が女になってしまうぜ、いいのか、黙って刀を捨てるんだ、早くしろ」と辰蔵が叫んだ。
「卑怯者、うっ・・・・」
「そうだよ、卑怯者で悪かったな、刀を捨てろ、捨てるんだ」

 志乃は唇を嚙み締め躊躇している。

「おい、早くしろ、切り落としてもいいのか」
「ま、待って下さい・・・・」と志乃は刀を捨てた。
「よし、女を縛り上げろ」と辰蔵がやったとばかりに声をあげた。


続く→牢獄の美姉弟 第17話 捕えられた志乃

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