☆この小説は「愛と官能の美学」のShyrockさんより投稿して頂いたものです。著作権はShyrockさんが持っておられます。
shyrock作 惠 淫花のしたたり

ヒロイン:中小路惠 20才 大学2回生 生物理工学部在籍中
あらすじ:
中小路惠は現在、大学の生物理工学部に在籍している。
物語は、惠が教授と共に新種の植物『植物X』を見学するシーンから始まる。
『植物X』は、外見が人間の顔に似ているため、惠は興味を持ちつつも不安を感じる。
数日後、惠は友人の女子学生宮本由紀とともに温室で迷子の黒猫を探すが、途中で『植物X』を発見し、由紀がその花弁が猫の顔に見えると言いだす。
惠は驚き、植物の変化に疑問を抱くが……
第5話
(眩しい……)
惠は瞼に光を感じ、意識を回復した。
どれだけの時間が経過したのだろうか。
しばらくの間、気を失っていたようだ。
(私、生きているんだわ……)
まだぼんやりとした脳裏に、かすかな記憶が蘇った。
確か蔦に絡まれてもがいているうちに、次第に意識が薄れていった。
(あれからどうなったのかしら……?)
思い出せない。
意識を失っていたのなら仕方のないことだ。
(で、今、私はどこにいるの……?)
奇妙だ。
生きていることは明らかなのだが、何か実体がないように感じられた。
つまり肉体が存在しないような不思議な感覚。
もしかしたら感覚が麻痺したのかも知れない、と惠は思った。
暑さも感じない、寒さも感じない、痛みもない、痒みもない……
手足を動かそうと思ったが、手足の感覚が全くなかった。
まるで手足を失ってしまったかのように。
(私、どうなってしまったのぉ……)
もしかして脳以外全てが麻痺してしまって、どこかに横たわっているのだろうか。
それならば、早く誰かに見つけてもらって、手当てを受けなければならない。
惠は助けを呼ぼうとした。
(誰か助けてぇ!)
しかし声帯がやられてしまったのか、声にならなかった。
他人に助けを求めることもできないのか。
不安が募るばかりであった。
そんな惠に一筋の光明が差した。
先程までは光は感じてもぼんやりとしか見えなかった目が、次第に視覚が戻ってきた。
(何か見えてきたわ……)
惠の前に視界が広がった。
(あっ! ここは!?)
惠の目に飛び込んできた風景は温室の中であった。
場所に見覚えがある。
(ここは『植物Ⅹ』のあった場所だわ!)
風景は紛れもなく蔦に襲われた場所、即ち『植物Ⅹ』の周辺である。
惠は周囲に目を凝らした。
だけどいくら探しても『植物Ⅹ』が見えない。
『植物Ⅹ』の周辺は見えるが『植物Ⅹ』が見えてこない。
(もしかして!?)
身の毛もよだつ戦慄が惠を支配した。
もしかしたら、ここは『植物Ⅹ』の中ではないだろうか。あの時、蔦に襲われて気を失ったあと『植物Ⅹ』に食べられてしまったのではないだろうか。
(そ、そんなっ!!なら、私はどうして今生きているの!?)
いや、もっと正確にいうなら、食べられてしまったのではなく、『植物Ⅹ』の中に閉じ込められてしまったのではないだろうか。
(だ、脱出しなければ!!)
惠は身体を動かそうとした。
しかし身体そのものの存在感が全くなく動かすことができなかった。
(そ、そんなぁぁぁぁぁ~~~!! 助けてぇ~~~!! ここから出してよ~~~!!)
惠は叫んだ。だが、やはり声にならない。
『植物Ⅹ』は自分を体内に閉じ込めて一体どうしようというのだろうか。
あの姿を消した猫もおそらく『植物Ⅹ』に捕獲されてしまったのだろう。
しばらくすると、ランの辺りで出会った男子生徒たちが目前にやってきた。
こちらを見ながら何か語り合っているが、声が聞こえてこない。
まるで音声を止めてテレビを観ている感じだ。
惠は歯がゆさを禁じ得ず、再度大声を出そうと試みた。
続く→「惠 淫花のしたたり」第6話
戻る→「惠 淫花のしたたり」第4話
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shyrock作 惠 淫花のしたたり

ヒロイン:中小路惠 20才 大学2回生 生物理工学部在籍中
あらすじ:
中小路惠は現在、大学の生物理工学部に在籍している。
物語は、惠が教授と共に新種の植物『植物X』を見学するシーンから始まる。
『植物X』は、外見が人間の顔に似ているため、惠は興味を持ちつつも不安を感じる。
数日後、惠は友人の女子学生宮本由紀とともに温室で迷子の黒猫を探すが、途中で『植物X』を発見し、由紀がその花弁が猫の顔に見えると言いだす。
惠は驚き、植物の変化に疑問を抱くが……
第5話
(眩しい……)
惠は瞼に光を感じ、意識を回復した。
どれだけの時間が経過したのだろうか。
しばらくの間、気を失っていたようだ。
(私、生きているんだわ……)
まだぼんやりとした脳裏に、かすかな記憶が蘇った。
確か蔦に絡まれてもがいているうちに、次第に意識が薄れていった。
(あれからどうなったのかしら……?)
思い出せない。
意識を失っていたのなら仕方のないことだ。
(で、今、私はどこにいるの……?)
奇妙だ。
生きていることは明らかなのだが、何か実体がないように感じられた。
つまり肉体が存在しないような不思議な感覚。
もしかしたら感覚が麻痺したのかも知れない、と惠は思った。
暑さも感じない、寒さも感じない、痛みもない、痒みもない……
手足を動かそうと思ったが、手足の感覚が全くなかった。
まるで手足を失ってしまったかのように。
(私、どうなってしまったのぉ……)
もしかして脳以外全てが麻痺してしまって、どこかに横たわっているのだろうか。
それならば、早く誰かに見つけてもらって、手当てを受けなければならない。
惠は助けを呼ぼうとした。
(誰か助けてぇ!)
しかし声帯がやられてしまったのか、声にならなかった。
他人に助けを求めることもできないのか。
不安が募るばかりであった。
そんな惠に一筋の光明が差した。
先程までは光は感じてもぼんやりとしか見えなかった目が、次第に視覚が戻ってきた。
(何か見えてきたわ……)
惠の前に視界が広がった。
(あっ! ここは!?)
惠の目に飛び込んできた風景は温室の中であった。
場所に見覚えがある。
(ここは『植物Ⅹ』のあった場所だわ!)
風景は紛れもなく蔦に襲われた場所、即ち『植物Ⅹ』の周辺である。
惠は周囲に目を凝らした。
だけどいくら探しても『植物Ⅹ』が見えない。
『植物Ⅹ』の周辺は見えるが『植物Ⅹ』が見えてこない。
(もしかして!?)
身の毛もよだつ戦慄が惠を支配した。
もしかしたら、ここは『植物Ⅹ』の中ではないだろうか。あの時、蔦に襲われて気を失ったあと『植物Ⅹ』に食べられてしまったのではないだろうか。
(そ、そんなっ!!なら、私はどうして今生きているの!?)
いや、もっと正確にいうなら、食べられてしまったのではなく、『植物Ⅹ』の中に閉じ込められてしまったのではないだろうか。
(だ、脱出しなければ!!)
惠は身体を動かそうとした。
しかし身体そのものの存在感が全くなく動かすことができなかった。
(そ、そんなぁぁぁぁぁ~~~!! 助けてぇ~~~!! ここから出してよ~~~!!)
惠は叫んだ。だが、やはり声にならない。
『植物Ⅹ』は自分を体内に閉じ込めて一体どうしようというのだろうか。
あの姿を消した猫もおそらく『植物Ⅹ』に捕獲されてしまったのだろう。
しばらくすると、ランの辺りで出会った男子生徒たちが目前にやってきた。
こちらを見ながら何か語り合っているが、声が聞こえてこない。
まるで音声を止めてテレビを観ている感じだ。
惠は歯がゆさを禁じ得ず、再度大声を出そうと試みた。
続く→「惠 淫花のしたたり」第6話
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