☆この小説は「愛と官能の美学」のShyrockさんより投稿して頂いたものです。著作権はShyrockさんが持っておられます。

shyrock作 アリサ 蒼い伝説


【.あらすじ】
 昔の半猫族と人間が共存していた時代、飢饉により村人たちは山の神に祈っていたが、神は条件として村の最も美しい娘を捧げるよう要求した。
 村長はやむなくアリサという少女を生け贄に選び、両親も悲しみながら同意した。
 アリサは自分の運命に絶望しながらも村のために受け入れ、最後の瞬間まで家族や村人に感謝していた。
 しかし、その平和な村の裏では、盗人の男たちが家に忍び込み、危険な状況が迫っていた。

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3

 およそ1時間に及んだ惨劇の幕は閉じられた。
 彼らはアリサへの陵辱を終えたあと、本業に目覚めたかのように家の中を物色し始めた。
 ところがめぼしい金品も見つからず、不満の言葉を吐き捨てた。

「ケッ!しけた家だぜ。何もねえや!さあ、イリノフ、誰か来ねえうちに早くずらかろうぜ!」

 二人の男はアリサに眼もくれずそそくさと退散していった。
 床に伏せたままアリサは動かない。
 瞳には深い悲しみが満ち溢れ、止めどもなく涙が零れ落ちた。


 日が暮れて両親が帰宅したが、アリサは今日の不幸な出来事には一切触れなかった。

(これ以上お父さんやお母さんを悲しませたくない。伏せておこう)

 夜が更けて、アリサは村の外れにある丘に登った。
 夜空を見上げ、さんざめく星たちに呟いた。

(どうして?どうして、こんなに悲しいことばかり起こるの?逝く前に少しだけでいいから幸せをください・・・)

 アリサは泣いた。
 堪えても堪えても、涙は後から後から溢れ出た。

(いくらくよくよしたって運命って変わらないんだ。私は20日後、生け贄として捧げられるんだ。残された僅かな日々をせめて明るく過ごそう)

 そう思い返し、家に戻ろうとしたとき、どこからともなく美しい音色が聞こえてきた。

(誰だろう。あの美しい旋律を奏でているのは)

 ありさは音のする方向に歩いて行った。
 するとひとりの旅人風の男がリュートを弾いていた。  アリサは聴き入った。

(にゃ~お~、どうしてだろう。胸の痛みが消えて行くような感じがする・・・)

 アリサの存在に気づいたリュートの男は弾くのをやめて声を掛けてきた。

「こんばんわ。僕は吟遊詩人のシャイローって言うんだ。僕の奏でる曲を聴いてくれてありがとう。音楽が好きなんだね」
「こんばんにゃあ。ええ、胸の痞えがす~っと消えていくような気がしたの」
「そうなんだ。それじゃもっと弾いてあげようか。でもどうしたの?何か悲しいことがあったんだね?」
「う、うん・・・」
「もし良ければ僕に話して」

 アリサはシャイローの言葉が胸に沁みた。
 今、出会ったばかりなのに、親にも話せないようなことも話せるような気がした。

アリサは最近起こった悲しい出来事をシャイローに語った。
 20日後に生け贄に捧げられること。今日暴漢に襲われたこと。
 彼女の話に耳を傾けていたシャイローは、聞き終わったあと深いため息をついた。

「そうなんだ・・・かわいそうに・・・」

 シャイローはポツリとつぶやき、我が事のように悲しそうな表情になった。
 アリサは語り終えるとしくしくと泣き出した。
 胸に詰まっいたものが、堰を切って溢れ出たような気がした。

 シャイローは再びリュートを手に取り、歌い始めた。
 その歌声と音色に、アリサは胸の深い傷が癒されていくような気がした。

♪青きオーブ

それは奇跡の勾玉

ド・シャーの洞窟

奥深くに眠らん

汚れなき心を持ちし者

その願い叶わん♪

 アリサはシャイローの歌を、瞳を閉じ、心の扉を開いて聴き入った。
 歌が終わったあと、アリサが尋ねた。

「にゃお~、ありがとう、私のために歌ってくれて。でも、その歌は何?ド・シャーの洞窟ってこの近くなんだけど」
「やはりそうなんだね。この歌は古くから歌い継がれてきた歌。僕はこの歌を旅先で聞き、それ以来、ド・シャーの洞窟をずっと捜していたんだ」
「でも青いオーブってなんだろう?あなたはそれを探しているのね?」
「うん、そうなんだ。あのぅ・・・もし良かったら、明日の朝、その洞窟に案内してくれないかな?」
「うん、いいよ」
「ありがとう。助かるよ。ところで君は何ていう名前なの?僕はシャイローって言うんだ」
「私はアリサ」
「アリサか、いい名前だね」
「にゃんにゃん、嬉しいな~。名前を誉めてもらったの初めてなの~」


 翌朝、ふたりは洞窟に向かった。
 洞窟は村の外れにあるが、昔から祟りがあると言い伝えられ、近づく者は1人としていなかった。
 アリサは両親に告げずに家を出た。
 話すと止められるのが分かっている。
 今までのアリサなら洞窟へは恐ろしくてとても近づかなかっただろう。
 だが今は違う。
 生け贄に捧げられると決まってからと言うもの、恐いものなど何もない。
 それに少しでもシャイローの役に立ちたい。
 それが深い悲しみを癒してくれた人へのわずかな恩返し。
 アリサは突然現れた吟遊詩人シャイローに惹かれる何かを感じていたが、それがほのかな恋心であることをまだ気づいていなかった。

 二人はクネクネと曲がった林道をひたすら歩き、やがて洞窟へと辿り着いた。
 アリサは持参した水筒を傾けながらシャイローにつぶやいた。

「ここがド・シャーの洞窟だよ」


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