第8夜 アイツの奥さん
アイツの奥さん

 夫婦揃って小学校教員の直之は幼なじみで夫婦同士交流のある伸一郎に、スワッピングを持ち掛けられて驚く。中年太りで醜く体の線が崩れた自分の妻に比べて、伸一郎の妻美沙さんは女子大生のような年も若く美しい女性であるからだ。だが夫婦交換を実行してみると、セーラー服とSMグッズを持参した美沙さんは想像以上に素晴らしい女性で…… (8132字)


「なあ、直之、お前スワッピングに興味はないか?」

 アイツにそう言われた時、俺は驚いた。たぶん冗談だろうと思ったのだが、いつになく真剣な様子のアイツは本気のようだった。スワッピングとは夫婦交換、すなわちお互いのパートナーを取り替えて楽しむアブないプレイだ。

 俺は冗談はよせ、と即答で断ろうかと思ったが思い直し、考える時間をくれ、とその場は切り上げることにした。

「じゃあ加奈子さんとも相談してなるべく早く返事をくれ。いい答えを待ってるぞ」

 そう言い残したアイツとスタンドバーで別れた後で、俺は冷静になって考え、こんなおいしい話があっていいのだろうか、と不思議な気持ちになった。

 俺は大松直之。45歳で小学校の教員をやっている。アイツと言うのは幼なじみで今でもとても仲の良い木村伸一郎という男だ。小学校の頃から家が近くて家族ぐるみの付き合いをしていたのだが、お互い結婚して独立し家庭を持ったのも同じ町内で、今でもお互いの家に頻繁に行き来して親しく付き合っている。こんな事はちょっとないのではなかろうか。

 俺とアイツは性格も外見も好対照で、だからこそ昔からよくウマが合って、仲良くして来れたのではないかと思う。俺は真面目で平凡が取り柄のような人間で、背が低く太っている。最近では見事なメタボ体型になってしまった。

 アイツは昔から器用で如才がなく、世の中をうまく渡っていくタイプの人間だ。背は高く今の言葉で言えばイケメンと言うことになるだろうか。何でもくそ真面目にやらないと気がすまない俺から見ると、ずいぶんいい加減な人間なのだが、美男子で人当たりが良いために皆から好かれて許されてしまうという、羨ましい性分なのだ。貴金属のセールスをやっていて、口がうまくハンサムなアイツにはピッタリの仕事と言えるだろう。そんなに熱心にやっているとは見えないが、一戸建ての新居を購入したから羽振りがいいのだろう。俺の方は今だに教員住宅住まいである。

 さてスワッピングなどと言うとんでもない行為を持ちかけられた俺は、アイツの奥さんとうちの嫁を比べて考えて、本当にいいのだろうか?と不思議に思わないではいられなかった。うちの嫁の加奈子は俺と同期で初任校に赴任した小学校の教員で、そこで親しくなり職場結婚したのだが、おそらく小学校の女先生という言葉で想像出来ると思う。気が強くヒステリックで、俺に輪を掛けたような真面目人間だ。が、これは職業病のようなもので、知り合った当初はカワイコちゃんだった加奈子も、悪ガキどもになめられないように、よくあるヒステリーの女教師になってしまった。俺のように男だとそれだけで抑えが効くのだが、若い女性が小学校で先生をやっていくのは大変なのだ。加奈子はそこそこの美人だと思うが、今中学生である1人娘の明日香を出産した頃から体重が激増してしまい、今ではもう俺と変わらない体型で、昔の面影は見る影もない。

 対してアイツの奥さんの美沙さんは、昔から女性関係が盛んだったアイツが選んだだけあって、とびきりの美人だ。女性としてはかなりの長身でスタイルが良く、しかもアイツより1回りも年下と言う羨ましいような奥さんなのだ。もう結婚して10年は経つが子供は作らない主義らしく、ちょっとパートで働いているが、女子大生だと言っても通用しそうな若々しさである。何より大人しくておっとりした、お嬢様風な所が非常にそそられる。はっきり言って加奈子とは月とスッポンだ。何を好き好んでこの夫婦交換をアイツが持ちかけて来たのか、本当に謎だった。

 次の日俺は、もちろん加奈子には用事を告げず、ちょっと遊びに行って来ると言ってアイツの家まで真意を問いただそうと行ってみた。どう考えても不自然だし、美沙さんが本当に承諾しているのか確かめてみたくもあった。実現すれば俺にとっては夢のような話だが、昔から冗談が得意なアイツに担がれているのではなかろうか?

 が、バカ、冗談だよ、本気にすんな、と言ったアイツらしい答を予想していた俺は、アイツも美沙さんもこの夫婦交換を熱望していると聞かされて、改めて驚いた。理由を聞くと、いわゆる倦怠期で夫婦の夜の関係がうまくいかないのだと言う。

「直之、お前の所はどうなんだ? 加奈子さんとうまくいってるのか?」

 いくら親しいとは言え、そこまで踏み込んだ話をした事は無論なく、俺はちょっと困ってしまった。お互いに夫婦仲自体は良い。アイツと美沙さんも、子供がいない事もあり普段から当てられてしまうくらいラブラブなのだ。俺と加奈子もそれなりに満足のいく夫婦生活を送っていて、明日香の成長が楽しみな毎日だ。が、正直言って夜の生活はそれほど盛んではなく、年に数えるくらいだろうか。ほとんどセックスレスに近い状態なのだ。

 アイツに夜の事を聞かされた手前、俺も正直にそう話した。すると、それなら一度で良いからスワッピングに応じてくれないか、そうすれば良い刺激になって、お互いその後の関係がよりうまく行くようになるはずだ、とアイツは言うのである。さらに、こんな事を頼めるのはお前しかいないんだ、頼む、とも。

 俺は美沙さんにも聞いてみた。本当にいいのですか?と。

「はい。主人ともしっかり話し合いました。ぜひよろしくお願いします」

ーーうっ……

 俺はアイツの隣にいそいそと座り、そう言って深々と頭を下げた美沙さんの麗しい美貌に改めて見とれてしまい、うなじの色っぽさに大いに心を動かされるのを感じた。不覚にも勃起してしまったようだ。こんな美しい女性を抱く事が出来るなんて夢ではないのだろうか?
 
 俺の気持ちは固まったが、問題は加奈子の方だ。俺に輪を掛けた真面目人間の加奈子の事だ。こんな不道徳な話を持ちかけようものなら、まず怒り出すであろう。もちろん承諾するとは思えないし、下手をしたらその後の夫婦関係にまで支障を来すかも知れない。

 が、本当に一生懸命夫婦で深々と頭を下げているアイツと奥さんを、むげに断る事は出来なかった。と言うのは表向きの理由で、本音は久しぶりに勃起してしまったペニスが承諾したのである。何とか加奈子を説得してみる、と俺は答え、良ければこの週末に決行しようと話がまとまった。と言うのは明日香が修学旅行で不在になるので都合が良く、アイツもそれを見越してこの話を持ちかけて来たのだった。

 さてその夜帰宅した俺は、明日香が寝たであろう事を確認してから、さっそく加奈子に恐る恐るこの話を持ち掛けて見た。すると何と加奈子はアッサリ承諾してしまったので、またまた俺は驚いてしまった。もしかするとスワッピングと言う行為は、俺が思っている程異常な事ではないのだろうか?いいわよ、アタシもあなたより伸一郎さんの方がカッコイイし、と冗談っぽく軽口まで叩く加奈子に、俺は複雑な心境になってしまったが、後戻りは出来ない。一夜限り、と言う条件付きで、土曜の夜にスワッピングが行われる事になった。

 当日、俺達夫婦4人はアイツが働いている宝石店で落ち合い、レストランで夕食を共に取った後、パートナーを交換して互いの家に帰る事になった。加奈子は嫌がるどころか大いに乗り気で、朝から機嫌が良い。家で昼食を取った直後には、あなた、本気で浮気しちゃダメよ、と言いながらキスまでされてしまった。それからいつになく入念に化粧して、勝負下着よ、と際どいデザインの小さなパンツを見せて来た。コイツこんなの持ってたのか!?まあ、小学校にそうゆう下着を着けて行かれても困るが。

 それからウキウキとよそ行きの服装に着替えた加奈子は珍しく華やいで見え、いつもヒステリックな嫁の機嫌が良いのは俺にとっても気分の良い事だった。うん、スワッピングもたまにはいいかも知れないな、と思ったが、もちろん本番はこの後だ。

 宝石店でアイツは、お礼です、と言って何とジュエリーを加奈子にプレゼントしてくれた。オイオイ、俺は美沙さんに何もプレゼント出来ないぜ、と言うと、こちらが無理を言った事だからいいんです、と返されて非常に申し訳ない気分になった。加奈子はもう満面に笑みを浮かべて、いきなりアイツに抱きつきそうな勢いである。加奈子に抱きつかれたら重くて大変だぞ。俺はふとそんな事を思い、アイツは本当に相撲取りみたいな加奈子を抱くつもりなのかと、今さらながら感じていた。

 さて高級レストランでの夕食も終わり、加奈子はアイツの家に、美沙さんは俺の教員住宅に一緒に帰る事になった。これも何だか美沙さんに申し訳ない。彼女はとても大きな袋を抱えていて、何だろうかと思い持ってあげようかと言ったが、やんわりと断られた。あ、そうか。着替えかと思ったのだが、それだけではなかったのである。

 家に帰ると、後はやるだけである。ううむ、ちょっと気まずい。どうしようかと思ったら、美沙さんの方が一緒にお風呂に入りましょうと言ってくれた。女性と一緒にお風呂に入るなんて、明日香が小さい頃夫婦で一緒に風呂に入れてやった時以来である。風呂をわかしている間、美沙さんがお酒でも飲みませんか、と言ったので冷蔵庫から缶ビールを出して2人で飲んだ。もっと気の利いたアルコールがあれば良いのだが、これしかないので仕方ない。そしてすっかり美沙さんにリードしてもらっている状況が情けないと思ったが、覚悟を決めると女性は強いようだ。加奈子の方はどうだろう?俺はふとそう思った。

 狭い風呂に2人で入る時、俺は既に完全に勃起していたので少し恥ずかしかった。美沙さんの方もさすがに羞じらいは見せていたものの、脂肪一つない見事なカラダを堂々と晒してここでも彼女の方が積極的だった。俺の勃起ペニスを見ると、あら、と口に手を当てるコケティッシュな仕草で笑い、俺はますます硬くしてしまった。洗いっこしましょう、と美沙さんは言い、お互いに相手のカラダをボディーソープで泡だらけにして洗い合うという、たいそう刺激的な行為を行った。美沙さんはスレンダーなのにやはり三十路の完熟した女性らしく、出るべき所はしっかり出た迫力満点のボディーで、俺は神に感謝しながら、アンアンとえっちなよがり声を出してくれる彼女のカラダをすみずみまで洗ってあげた。これが加奈子だと迫力があり過ぎるだろうが。どうも事に及ぶのに加奈子の事が頭に浮かんでしまい、これがスワッピングの醍醐味なのだろうか、と俺は思った。

 美沙さんも俺のカラダをあちこち洗ってくれて正直くすぐったかったが、股間を洗われる時、俺は情けない事を言った。

「すみません、もしかすると出してしまうかも知れません」

 美沙さんの美しいカラダを目に辺りにし、洗わせてもらった時の彼女のよがり声を楽しんで、俺のムスコはもう爆発寸前の危険な状態にあったのだ。ところが美沙さんは動じず、いいですよ、と言うと俺のペニスに手を掛け、優しく洗い始めたのである。

ーーこ、これはマジでヤバイ……

 こんな所で発射してしまったらせっかくのスワッピングが台無しだ。俺は情けない事に彼女の手を掴んでやめてもらおうとしたが、いいです、出して下さい、と彼女は意外に強い力で許してくれなかった。そしてそれどころか、余った方の手を俺のお尻の下に入れると何とアナルをほじって来たのである。俺はもうたまらずドピュッと放出してしまっていた。

「すみません……」

 恐縮する俺だったが、相変わらず美沙さんは、いいんです、を繰り返しザーメンを綺麗に洗い流してくれながら、もう片手の指をアナルをほじくったままクニクニと動かして来た。すると驚くべき回復力で俺のペニスは美沙さんの手の中で蘇ったのである。

「ね、大丈夫でしょ?」
「は、はい、ありがとうございます……」

 俺はマヌケな応対をしながら、もしかすると自分はとんでもない女性を相手にしているのではないかと思い始めていた。もちろんとんでもなく素晴らしい、という意味だ。

 風呂から上がった美沙さんは又も驚くような行動をとった。

「直之さん、ハダカでいて下さいませんか?」
「いいですよ」

 これからいよいよ事に及ぼうとする所で、美沙さんのアナル責めで勃起を回復したペニスを反り返らせながら、俺はそう答えるよりなかった。

「私ちょっと変わった趣味なんで、驚かないで下さいね」

 美沙さんはそう言ったが、風呂の中で十分驚いていたから大丈夫だろう。彼女は大きな袋の中から何やら取り出して着替え始めたのだが、俺はそれを見る目が次第にテンになった。美沙さんは何と女子高生のようなセーラー服姿に着替えたのである。

「こういうのはお嫌いでしょうか?」
「い、いえ……とても素敵です……」

 それはお世辞ではなく、美沙さんは30台半ばとは信じられないくらい、ミニスカのセーラー服が似合っていた。それにセーラー服が嫌いと言う男はあまりいないだろう。長身の美沙さんのスラリとした、それでいながら三十路らしくムッチリと肉の乗ったオミアシがめちゃくちゃに扇情的で、俺はさっき回復したペニスにどんどん血が流れ込んで来るのを感じていた。

「あの、もしお嫌でなければ、お願いがあるのですが」

 美沙さんの次の言葉も非常に驚きで、俺が高校生なら鼻血を出していたかも知れない。

「私が1人えっちするのを見ていて頂けませんか?」

 そして美沙さんは、その場にあぐらをかくように座ると、始めてしまったのだった。面倒そうなので、何もセーラー服を着てからされなくても、と思ったが、見ている方からすると大いに刺激的だった。上はノーブラで、ブラウスをずらして柔らかそうな乳房を出し、乳首を摘んで膨らみ全体を揉みしだいて、美沙さんが悩ましく喘ぎ始めた。そしてミニスカをどけて股間にわざわざはいていた、本物の女子高生みたいなロリっぽい白の木綿パンツをずらして美沙さんの指が大事な箇所に潜り込んで行くと、正面に座った俺は身を乗り出してのぞき込んでいた。

「ああ~っ! 気持ちいい~っっ!!」

 余りにあからさまに歓びの声まで張り上げる美沙さんは、全く素晴らしい女性だった。そして美沙さんは淫声を弾ませてこう言った。

「よかったら、直之さんもご一緒に、1人えっちして下さいませんか?」

 俺は仮性包茎なので、すぐにせんずる事が出来る。意外な事の連続で興奮し、見境のなくなった俺は美沙さんのオナニーを拝見しながらシコシコと始めてしまい、彼女がいきますうっ!と気持ち良く絶頂を訴えた時に、又も射精してしまっていた。

 ううむ、さすがに今度こそまずい。俺の年齢では2発の射精でも無謀ななくらいだ。実際今の射精量は明らかに少なかった。こんな素晴らしい美沙さんと本番をする事なく終わってしまったのか。俺は興奮にまかせて先走ってしまった自分の愚かさを嘆いていたのだが、美沙さんは一度の絶頂など何でもなかったかのようにこんな事を言ったのである。

「直之さんは、SですかMですか?」

 大いに戸惑う俺に、美沙さんは袋の中から本格的な手錠を取りだして、これを使いたいんです、と言った。俺はSMには興味がないし、加奈子とそうゆうプレイをしたこともないが、手錠を掛けられるのはさすがに抵抗がある。そう正直に答えると、それでは私に手錠を掛けて下さい、と美沙さんは言い出した。それからは彼女の言う通りに袋の中からSM道具を取り出していき、後ろ手に手錠を掛けて仰向けに横たわった彼女に目隠しをしてから、筆で全身をくすぐって下さい、と言うので、書道用の毛筆で美沙さんの全身をくすぐってあげた。

 すると美沙さんは面白いように大声で悩ましくよがり声を張り上げながら、俺の這わせる筆の刺激に大袈裟なくらいビクンビクンと反応して下さった。これがSMプレイと言うものか。俺は美沙さんの素晴らしく淫らな反応ぶりに、何とさして絶倫でもないペニスが三たび回復し始めるのを感じ、美沙さんにそれを知らせた。

「美沙さん、又ムスコが硬くなって来ました」
「じゃ、じゃあ、おしゃぶりさせて下さいっ!」

 その後はまるで夢ではないかと言うような素晴らしいセックスの時間だった。手錠を掛けられ横になった美沙さんの口に乱暴に突っ込んだ俺のペニスは彼女の口内で3度目の射精を行ったが、それを実に丁寧に傘の裏までペロペロと舐め取って下さる美沙さんのおかげで、俺の男根は狂ったように萎えなかった。それから今度は振動するローターを美沙さんの全身に使って彼女の素晴らしいよがり声をたっぷり楽しませて頂いた後、太くてイボイボが埋まりクリトリスとアナルを刺激するための2本の小枝付きの本格的な男根型バイブレータで、美沙さんを二度三度と絶頂に送り込んで差し上げた。

 そして、直之さん、来て下さい、おちんちんで犯してえっ!と絶叫する美沙さんにほだされた俺は、異常な勃起を続けるペニスを彼女のおまんこに挿入させて頂いた。大丈夫だろうか?と頭をかすめた危惧も、美沙さんのネットリと絡み付いてきつく締め付けて来る素晴らしいセックスの前に消し飛んでしまって、遂に4度目のザーメンを彼女の中に出してしまったのである。

 翌日昼前まで眠りこけてしまった俺は、何か柔らかいモノの感触で目覚めたが、それは何と美沙さんがお尻を俺の顔を圧迫して起こしてくれたのだった。そうだった。彼女は後ろ手に手錠を掛けられたままなのだ。

「ひどい人」

 そう拗ねて甘えるような言葉を掛けて来た美沙さんに、俺は再び欲情を覚え、

「もう1回、えっちしますか?」

 と言う彼女のお誘いのまま、最後のセックスを楽しみ、避妊薬を飲んでるから大丈夫です、と言われて又も中に出してしまった。昨日から美沙さんと1年分のセックスを楽しんだような気分だ。落ち着いて彼女の手錠も外してから話してみると、美沙さんのアブノーマルと思えるプレイは全てアイツに教えてもらったものらしい。ところが長年同じパートナーとのセックスでは、どうしても燃えなくなってしまい、美沙さんの方からスワッピングをアイツにお願いしたのだと言う。

「僕なんかで良かったのでしょうか?」
「はい。私、本当は主人より、直之さんのような太った方の方が好みなんです」

 それは単なる社交辞令だったのかも知れないが、俺は単純に嬉しくなって彼女と最後に熱烈なキスを交わして別れたのである。

 その夜アイツの家から帰って来た加奈子はやはりご機嫌なままだった。

「伸一郎さん、本当は私みたいなふくよかな女性が好みなんですって」
「社交辞令に決まってるだろ、ははは」

 どこかで聞いたようなセリフだと思った。すっかり開放的な気分になっていた俺は、アイツはどうだった?と下品な質問をしたが、加奈子は妙に色っぽく笑って答えない。しかし、伸一郎さんからもらって来たの、と加奈子が見せてくれた手錠だのローターだのを見れば十分想像が付いた。そして加奈子は言ったのである。

「ねえ、今度使ってみましょうよ」
「お前、手錠を掛けられたいのか?」
「バカね、あなたに掛けるのよ」

 どうやら加奈子は、アイツに手錠を掛けていたぶるSの歓びを教えられてしまったらしい。俺はアイツら夫婦は、どちらがSでどちらがMなんだか混乱してわからなくなった。が、そんな事はどうでも良い。今目の前で手錠を見せるでっぷりと太った加奈子に、手錠を掛けられ、この豚野郎! と決まり文句を吐きかけられる事を想像した俺は、それも興奮して良いかもな、と思っていた。

 スワッピングの話は約束通りあの夜一度切りで、その後は以前と変わらぬ家族ぐるみの付き合いをアイツの家と続けている。お互いの夫婦仲にもひびが入るような事はなく、むしろ前よりうまくいくようになったと思う。唯一変化が起こったのは、美沙さんが妊娠された、と言う事だ。アイツは、時期がずれてるし避妊してたから大丈夫だ、気にするな、と言うのだが、俺は疑っている。もしかするとアイツの肉体に欠陥があり生殖能力がなく、俺の精子で美沙さんを懐妊させようと仕組んだのではないか?それはおそらく俺の妄想に過ぎないだろう。今夜も加奈子の巨大な尻に顔面騎乗されて窒息しそうになりながら舌を使わされ、彼女の指にアナルをほじくられながら口唇でザーメンを搾り取られる興奮を思い描きながら、俺は幸福を感じていた。

~おしまい~


プチSM千夜一夜ものがたり 第1期 目次