第19夜 舐め犬
舐め犬
 見合い結婚した夫と別れた私は、一度「舐め犬」の快感を味わってみたくてネットの掲示板で募集。どうやら私のアソコは人並み外れて臭いらしく、これまで誰も舐めてくれなかったのです。やって来た男性はホームレスみたいな小汚い風貌で、私は期待に胸を膨らませたのですが、果たして。(約1万3千字)


1.初めての舐め犬(2800字)

「ごめんくださーい」

 天気が良くて初夏のじっとり汗ばむような昼下がりの事でした。 インタホンが鳴って何だか気の弱い宅配便のような情けない声が聞こえたので、私はその人の姿を確認しました。すると声の感じとイメージどんぴしゃ、と言ったら良いのでしょうか、いかにも人付き合いが苦手そうな男の人がオドオドとひどく落ち着かない様子で玄関に立っていました。大きな紙袋を提げていましたので、たぶんこの人だろうな、と思い私は単刀直入にお聞きしました。いろんな道具を持参します、とお聞きしていましたので。

「舐め犬さんですか?」 
 
  するとその男性は一瞬驚いたように眉をピクッとさせ、辺りをキョロキョロ見回しています。あら、ごめんなさい、何かの間違いだったかしら。

「わんわん!」

  すると太郎ちゃんが吠えてしまったので、この人ますますオドオドしてしまいました。太郎ちゃんはうちで番犬として飼っているブルドッグで、そんなに吠えたりしないんですけど、男性の様子が見るからに不審なので吠えちゃったんでしょう。でもちゃんと繋いであるし、そんなに恐がらないでもいいのになあ。そもそもこの人、舐め犬さんじゃないなら、何の用事なんでしょう?と思ってたら、意を決したような表情で、インターホンに向かって言いました。

「あ、はい、舐め犬です……」
「どうぞー」

 なんだ、やっぱりそうだったんですか。すごく男性的な、そうですね、それこそ有無を言わさず女性を押し倒して、みたいな「舐め犬」さんを想像していた私は、こんなので大丈夫なのかしら? と思いながらお通しする事にしました。だって勇気がないと出来ないじゃないですか、普通。見ず知らずの女性のアソコを舐めるんですよ。悪い病気がないとも限りませんしね。私はまあ……悪い病気はないと思うんですけど、たぶん。本当の所はわかりませんけど。

 でも、玄関にお通しした「舐め犬」さんの、ボサボサのロン毛と言うか、ただ散髪代がないから髪も髭も延ばし放題です、みたいなむさ苦しい風貌と、この人お風呂入って服着替えてるのかしら? と疑いたくなるようなボロボロのジーパンとTシャツと言う格好を見てると、私の考えは変わりました。こういう気弱なホームレスみたいな、生まれてこの方彼女いない歴40年です、みたいな男性こそ「舐め犬」にふさわしい方なのかも知れません。何と言っても初めて会った女性の、病気があるかも知れない汚い場所を喜んで舐めようと言うのですから、その、相当「ヘンタイ」でなければ務まりませんよね?

  玄関先では何ですから、家の中に上がって頂くよう申しましたら、「舐め犬」さんは、

「失礼します」

と言って靴を丁寧に揃えてらっしゃいました。ホームレスのような外見なのに、意外と育ちの良い方なのかも知れません。その靴はやっぱりボロボロに履き潰して原型をとどめていないような運動靴でしたけど。

  応接室にお通しして、ソファーに腰掛けられた「舐め犬」さんは、こういう者です、と名刺を出されました。その、パソコンで作ったらしいペラペラの名刺には「全日本舐め犬連盟南九州支部、山田太郎」と冗談みたいな事が書いてありました。その名刺を出された「舐め犬」さんは急にオドオドした態度がなくなりましたので、世の男性にとって名刺と言うのはよっぽど自分に自信を持たせてくれる物のようですね。そんなおもちゃみたいな物に価値を見いだすなんて、いじましいと言いますか、子供っぽいと言いますか。

「奥さん、舐め犬は始めてですか?」
「はい?」

 私は若い子のように、小首を傾げて見せます。いや、若いと言えば若いんですけどね、私もまだ。山田さんはホームレスみたいな外見で老けて見えたのですけど、声は意外とお若く、もしかすると私とそう変わらない年齢なのかも知れません。でも「舐め犬連盟」って団体まであるなんて、私が知らないだけで「舐め犬」って結構ポピュラーなんでしょうか?山田さんが、まるで食洗器は始めてですか?みたいな感じで聞かれたので、私はますますその思いを強くしていました。

 確かにネットで調べてみると、「舐め犬」掲示板なんてのが沢山あって、「舐め犬」志願の男性やら、「舐め犬」募集の女性の方が山ほど書き込みをされていました。私は田舎の大地主の家で生まれ育ち、今ものほほんと定職にも就かず暮らしている世間知らずですから、世の流行から取り残されているのでしょう。でまあ、基本的に毎日ヒマですから、何の気なしにネットサーフィンしていた所「舐め犬」と言う行為?(でしょうか)が存在していて、恋愛抜きで女性のアソコを舐めて下さる男性がいらっしゃる事を知ったわけです。

  私は、その、ちょっと羞ずかしいんですけど、結構えっちな事が好きでして、毎日1人でシテしまってるんですが、男の人に舐めてもらった事はほとんどないんです。チャンスはあったんですけど、皆さんあんまり女性のアソコを舐めるのがお好みではないようで……まあ仕方ないと思います。私だって男性の性器に口を付けるのはすごく抵抗がありますし。何と言っても汚い排泄をする場所ですから、衛生面を考えても、生理血などのオリモノなども含めれば男性よりさらに穢らわしい女性器に口を付けたくはないですよね、普通は。

  ところが「舐め犬」掲示板などに掲載されている体験談を拝見しますと、皆さん、これが物凄く気持ち良いものらしく、生きてて良かった、とか、こんな気持ち良い事を知らずに生きて来た事を後悔してます、なんて感激されているご様子ばかりなんですね。「舐め犬」さんにシテ頂ける行為も事細かく書かれていて、読んでいるともうアソコがムズムズして真っ昼間から指を使わないではいられなくなる程でした。ああ、こんな所やあんな所を、こんな風やらあんな風やらのテクニックを使って、指の替わりに柔らかい舌で舐めて頂けたら、さぞかし気持ち良い事でしょう! 私は感じ易い体質ですので、指でも十分に満足して下着を汚しながら、一度試してみよう、と思い「舐め犬」さんにお願いする事にしたのです。

 先程申しましたように、掲示板には目移りする程山のような書き込みがあったのですが、私は自分の住んでいる地域に来て頂ける「舐め犬」さんの中から、「南九州地区で舐め活中!」と妙な気合いを感じる書き込みをされていた山田さんを選びました。あ、名前はまだわかりませんでしたけどね。「貴女がソファーでくつろいでいる間中ずっと貴女の股間に顔を埋めて」と言う文面で始まる彼の書き込みは、とてもここには書けないようなえっちなやり方を事細かく説明していました。そして女性の年齢などは問わず、どんな事でも希望に応じて何時間でもご奉仕し、同意しない事は絶対に行いません、と言うのです。私は彼がして下さる行為の説明を読みながら、やっぱり自分の指でイッテしまい、相当期待を込めて山田さんに連絡を取ったのです。


続く→舐め犬 2.実年齢の告白

舐め犬目次

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