弟76夜 義姉さんは家庭教師
義姉さんは家庭教師
 名門三島家の息子だが次男で普通の高校生活を送って来た雄二は大学入試に失敗し浪人生となってしまう。一族の恥とまで責められる雄二だが、仲の良い長男で三島家の御曹司である正則は彼のために妻の春美を家庭教師に付ける。内気で女性の苦手な雄二に好意的な春美は美形で、本物のお嬢様育ちらしくあまりにも無防備。美し過ぎる義姉を性の対象として見てしまう事に罪悪感を覚える雄二を積極的に誘惑し始める春美。そして、ついに……


3.驚愕の依頼(4414字)

 春美義姉さんと許されない性行為を持ってしまった正にその夜兄ちゃんから呼び出された僕は、翌朝とてもいたたまれない思いで兄夫婦宅の豪華な応接間のソファに座っていた。何しろ春美さんの事で話があると言われたのだ。とても偶然とは思えない。

ーー春美さんが兄ちゃんに話してしまったのか? でも、あちらから誘って来たのに、一体なぜ?

 セックスには至らなかったけれど、キスして互いの性器を舐め合ったのだ。義理とは言え、姉弟で。こんな人として絶対に許されない行為を暴かれたら、どう兄ちゃんに謝れば良いかわからない。だけどあの時家にいたのは二人切りで、春美さんがバラさない限り兄ちゃんに知られるとは考えられない。まさか僕を陥れるために仕組まれた罠だったのか? 春美さんがそんな性悪女だなんて信じられないし、信じたくもなかったけれど……そもそもそんな事をする理由だって皆目見当が付かない。応接室のフカフカのソファに座って一人待つ間、僕の頭は千々に乱れ、いつの間にか全身にじっとりと気持ち悪い汗をかいていた。

「本当に良く来てくれた、感謝するよ。まあ、コーヒーでも飲んでくれ」
「あの、話と言うのは一体……」
「落ち着いてからゆっくり話そう。春美が焼いてくれたクッキーも、食べてやってくれないか?」

 兄ちゃんは僕の事を責めるような口ぶりでなく、妙に下手に出ている感じだったけれど、安心は出来ない。兄弟だけど、こんな立派な部屋で改まって向き合うのは初めてだ。重要な話であるのは間違いない。おまけに当事者の春美さんまで同席し、ひどく緊張した面持ちで兄ちゃんの隣に座っているのだ。出来ればこの場から逃げ出したい気持ちだったけれど、兄ちゃん夫婦がコーヒーを飲みクッキーをかじるのを見て、仕方なく僕も口に運ぶ。やっぱり洋酒でも入っているのだろうか、香ばしい焼き立てのクッキーを食べるとフルーティーな味が口一杯に広がり、体がカーッと熱くなる気がした。

「さて、今日来てもらったのはコイツの事なんだが……」

 とても言い辛そうで口の重い兄ちゃん。春美さんはと言えば、ずっと無言で顔を伏せている。僕は覚悟を決めて次の言葉を待ったのだけれど、全く予想外の方向に話が向かって面食らう事になった。それは正にあり得ない、驚愕の展開と言って良かった。
 
「まずお前に謝らないといけない。あんな事を春美にさせて本当にすまなかったと思っている。どうか許してやってくれ」
「本当に、申し訳ございませんでした」

ーーええっ!? あんな事、って昨日の事だよな。どうして謝られなきゃいけないんだ、わけがわからない

 僕の方が謝らなきゃならないと思っていたのに、話が逆だ。

「実は……」

 兄ちゃんによれば、やはり春美さんは僕を誘惑し性行為に持ち込んだのだと言う。それを夫に言われてやってしまったと言うのが、とても信じられないけれど事実らしかった。そしてその理由たるや正に驚天動地。僕は驚きのあまりひっくり返りそうになり、変な夢でも見ているのではないかと思った。そうだ、きっと春美さんに恋した僕の禁断の願望が形となってこんな夢を見させているに違いない。でも無意識にこんな事を思い付くなんて、僕には小説家の才能があるのだろうか。

「非常に言いにくい事だが……お前の精子が欲しかったんだ」
「精子って……どういう事?」
「ええと、まあ、春美の中に出して欲しかったんだよ。でもお前は立派だな。春美が一生懸命モーションを掛けても断ったそうじゃないか」
「そんなの……当たり前だよ」
「俺はそういう弟を持った事を誇りに思うし、春美の夫として感謝もしている。だけど、もう小細工はやめてお前に頼もうと思う。春美を抱いて、妊娠させてやってくれないか?」
「出来るわけないじゃないか! それに、意味わかんないよ」
「もちろん道義的に間違っているし、お前の気持ちはよくわかる。だけど、これは俺としても苦渋の決断なんだ。わかってくれ、雄二」
「兄ちゃん……」

 10も年上で社会的にもはるかに立派な兄ちゃんに、まるで土下座でもしそうな感じで深々と頭を下げられた僕は困ってしまった。そして兄夫婦はこの不道徳極まりない依頼の理由を語り始める。
  
「俺達にはまだ子供がいない。これは三島家にとって由々しき問題だ」
「だから、もしかしたらと思って、お医者さんに調べてもらったの」

 その時初めて重い口を開いた春美さんは、何と涙ぐんでいた。だから僕は兄夫婦の告白を真剣に聞くよりなかったのだ。

「私の方に異常はありませんでした」
「じゃあ、もしかして兄ちゃんが……」
「そうだ。俺には生殖能力がない事がわかってしまったんだ。すまないが、雄二、これは内々の秘密だぞ。絶対他の親族にバラさないでくれ」
「もちろん」
「三島家はただの家柄ではない。跡取りを絶やすなど言語道断だ。なのに……結婚して一年たっても子供が出来ない俺達に、親族から圧力が掛かって来た」
「あの……養子を貰うとかすれば、いいんじゃないの」
「それは最後の手段だ。なぜなら」

 兄ちゃんの次の言葉に、僕は又してもひっくり返りそうになった。

「お前がいるからだ」
「ちょっと待って! そ、それって、どういう事?」
「もし俺に子供を作る能力がないとすれば、三島家は次男であるお前が継がねばならない」
「そんなの無理に決まってるじゃないか!」

 幼い頃より英才教育を受けて来た超エリートである兄ちゃんの替わりが、僕なんかに勤まるわけはない。大財閥の御曹司と言えば聞こえは良いが、とても凡人には耐えられない大変な立場である事はよくわかっているし、僕はあいにく権力を握ってやろうなんて野心を毛ほども持ち合わせていない気弱な人間なのだ。

 そして何より、万一そんな事態に陥ってしまったら兄ちゃんの立場はどうなるのだ? 繰り返すが、僕は三島家の跡取りの座など欲しくはない。幼い頃からかわいがってくれて、今もなお世界で一番敬愛している兄ちゃんに屈辱を味わわせるようなマネなど絶対に出来なかった。

「お前さえ良ければ、それでもいいんだぞ」
「絶対に嫌だ!」
「そう言うと思ったよ」
「だから、春美さんを妊娠させて、その子を兄ちゃんの子と言う事にするわけ?」
「そうだ。もちろん発覚すれば犯罪行為だから、内々に処理するしかない。これは、俺と春美、そして父さんと母さんだけで話し合った結果の案なんだ」
「え、父さんや母さんも?」

ーーそうか。だから母さんはいつもコーヒーを持って来た後、買い物に出掛けて……

 母さんのそんな行動や、春美さんの扇情的な服装を見ても平然としていた事も納得がいった。だけど、春美さんと子供を作りなさい、と言う意味だったんだと思うと、気恥ずかしくて顔が真っ赤になるのがわかる。そして同時に、これが家族ぐるみで仕組まれた計画であった事に気付いて慄然とする物を感じていた。僕に拒否権なんかあったのだろうか。

「お前には本当に申し訳ないが、ここまでは皆で考えた筋書き通りだったんだ」
「大学に行けなかった事や、義姉さんが家庭教師でやって来た事も……」
「そうだ。だから、本当にすまなかったと思っている。この通りだ、許してくれ」
「もういいから、そんなに頭を下げないでよ」
「妊娠するまででいいんだ。お願い出来るか? 雄二」
「あの……義姉さんの気持ちは?」

 家族ぐるみでこれだけ大掛かりな計画の全貌が見えるに連れて、覚悟を決めるよりないと言う気持ちに傾き掛けていた僕には、それが一番気になっている点だった。女の子が苦手でまだ童貞の僕は、セックスは愛し合う二人の行為であると思っている。そんな状況ではないとわかっているし、夫である兄ちゃんの前で義姉さんの気持ちを確かめるなんて酷い男だと思ったけれど、春美さんが僕の事を子供を作るための種馬のようなものとしか思っていないとしたら、辛過ぎたのだ。

 こんな答えにくい質問を振られた春美さんはしかし、やはり素晴らしい女性だった。

「ごめんなさい。私の気持ちなんてどうだっていいのに、雄二くんに気を使わせて」
「いや、そういう意味では」
「私、雄二くんの気持ちを弄んだ、悪い女だわ。雄二くんの方こそ、いいの? こんな女なんか嫌だって、断っても当然なのよ」
「……嫌じゃ、ないです」
「ありがとう。私ね、初めはやっぱりこんな年下の男の子を誘惑するなんて、すごく抵抗があったし正直嫌だったのよ」
「ですよね」
「でもね、雄二くんが私の事好きになってくれたと思って……思い過ごしかも知れなかったけど」
「思い過ごしなんかじゃないです。僕、義姉さんが好きです」
「雄二くん、そういう所優しいのね。正則さんとソックリ」
「嘘じゃないですから」
「私もね、イケない事かも知れないけど、そんな雄二くんがだんだん好きになって来て……だから、あんな事しちゃったのよ。本気で好きでなきゃ、エッチしようなんて思わないわ」

ーー春美さん! 兄ちゃんの前で、それはヤバいのでは……

 自分で気持ちを確かめたクセに、大胆過ぎる春美さんの発言に僕の方が心配になった。だけどもちろん兄ちゃんは穏やかな表情の顔に笑みを浮かべている。心の内はわからないけれど。

「夫としては少々複雑だが、春美もこの通り決してお義理でセックスしようなんてつもりではないんだ。やってくれるか? 雄二」
「う、うん、わかった」
「どうか、よろしくお願いします、雄二さん」

 わざわざソファーから下りて床に三つ指を突く春美さんは、まるで新婚初夜の初々しい花嫁さんがオーバーな挨拶をしてるみたいで、グッと来た。僕の気持ちだけでなく、恥ずかしいけど股間を突き上げて来る異常な程の欲情に、ペニスがググッと強烈に勃起していくのがハッキリわかったのだ。するとまるでそれを察したかのような兄ちゃんの言葉に、僕は又も驚かされる事になる。

「では、早速。場所を変えよう」
「ち、ちょっと待ってよ!」
「善は急げだぞ、雄二。今日だけは、俺も立ち会わせてくれよ」
「ねえ雄二くん。仲良く一緒にやりましょ」

ーーあり得ない。やっぱり夢か。一体何つう夢を見てるんだ、僕は

 妻を抱いて妊娠させてくれと言う依頼自体信じられなかったが、さらに兄ちゃんもいれて三人でと提案された僕は完全にパニック。兄夫婦は悪い薬でもやってるのではないか、と思ったら、何だかルンルンの春美さんが言う。

「ごめんね、雄二くん。春美のお菓子は、いつも、エッチしたくなるおクスリを入れてたの。ああ、早くしたいわ、雄二くうん。きっと春美のオマンコ、もうベチョベチョだよ」
「うむ、これはきついな。さすがに値が張るだけの事はある、外国製の媚薬だ。雄二、お前よく春美をやらずにいられたな、わが弟ながら感心するよ。俺だってもう、我慢したら気が狂いそうだぞ」

 そんなからくりまで打ち明けられた僕は、何と地下室に連れ込まれたのである。それはこれまで存在する事すら知らなかった兄夫婦の秘密の部屋であり、さらなる驚愕の展開が僕を待ち受けていたのだった。


続く→義姉さんは家庭教師 4.秘密の地下室

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